罪深き女 感想

【罪深き女】(ポイズンドーターホーリーマザー/湊かなえ より)

髙橋優斗という人間と黒田正幸という人間は光と影、対称的な人間だと思う。

前者は家庭環境に恵まれ、普通の野球少年からジャニーズ事務所のアイドルになったというシンデレラボーイであり、チャンスを逃さず掴み取ってきた。 後者は環境には恵まれず、幼い頃からつもりに積もった不幸を理由に15人殺傷事件を起こしている。

作中で彼は事件の動機を「運の悪い人生に嫌気がさしたから」と語っている。それを正幸と対称的な人生を歩んできた髙橋優斗が演じるのはきっと難しいのではないだろうか。

正幸は母親が男を連れ込んで自分は外に出されお腹がすいても寒くてもずっと座って待っていた。世間からは「異常」と認識されるその環境は彼の「日常」だったのだろう。あの日幸奈から貰ったメロンパンを何を思いながら食べたのだろうか。

正幸はそんな幸奈を信頼していたのではないか。自分を唯一救ってくれる幸奈を、同じような環境と過ごしていた彼女を救おうと火を放った。

大人になって再会し、彼女を見た瞬間の彼は確かに「天野幸奈」と認識していたはずだ。 そして似たもの同士であると思っていた幸奈が世間の「日常」を過ごしていることを知って絶望したのではないか。

幸奈と再会したときの彼の「日常」はどのようなものだったのか。事件を起こす前、彼は名前の通り、正しい幸せを掴んでいたのだろうか。それとも…

幸奈との再会のシーン、取調べのシーンを「光」である髙橋優斗はどのように演じるのか。今から楽しみである。